PTA入退会のあり方

PTAは任意団体であり、入会を強制したり、入学とともに自動的に入会したりするものではありません。
2022年6月17日、当時の末松信介文部科学大臣は閣議後の記者会見で、入会の強制性や活動負担の重さへの指摘が出ているPTAのあり方について、「地域の状況に応じて協議をし、自主的に決めていくのが正しい考え方だ」と述べ、任意団体であることを理由に各PTAの判断に委ねる考えを強調しました。「入退会のあり方はそれぞれのPTAでご判断いただくのが筋」と語り、文科省としては関与しない姿勢が示されました。一方で「PTAは、学校と家庭と地域の連携を強化していく上で重要。保護者の声も十分うかがいながら子供たちの健やかな育成を支えるための役割を十分に発揮していただきたい」と期待も示されました。
都Pでは、子供の入学時に保護者に対して入会の意思確認をすることや、入会届を提出してもらうことを推奨しています。
・入退会の仕組みや会則を整える
・加入は任意であるとの説明をする
・入会届の整備/加入意思を確認する
・加入意思の確認をしないまま、会費を徴収、引き落としをしない
・個人情報を正しく取り扱う
これらのことを整備しているPTAは少しずつ増えているようです。
皆さんのお子さんの通う学校のPTAではどのようになっているでしょうか?

任意加入の説明と加入意思の確認
2022年9月に都Pが実施した「PTA実態調査」(回答:都内公立小学校PTA159校)によると、「PTAが任意加入であることの説明」を行なっているPTAは79.9%、また「加入意思の確認」を行なっているPTAは72.3%という結果でした。


この二つの設問の回答結果から159校のPTAを4つのグループに分けると、「任意加入の説明」「加入意思の確認」を両方行なっているPTAが63.5%、一方で「任意加入の説明」「加入意思の確認」のどちらも行なっていないPTAが11.3%となりました。

この調査は、この数年継続して実施されています。
下の図のように、「任意加入の説明」「加入意思の確認」を両方行なっているPTA(グラフ右上の部分)は徐々に増えてきている一方、「任意加入の説明」「加入意思の確認」のどちらも行なっていないPTA(グラフ左上の部分)は、年々少なくなっています。

 

加入率低下を恐れない!
「PTA実態調査」では、各PTAの加入率も聞きました。
加入率「100%」のPTAは30.2%、「95%超100%未満」51.6%、「90%超95%未満」9.4%と、加入率が「90%」を超えるPTAが91.2%という結果となりました。
(当協議会の2022年9月実施の都内公立小学校PTA159校を対象とした「PTA実態調査」から)

加入率を「任意加入の説明」「加入意思の確認」の実施状況から4つグループに分けてみると、「任意加入の説明」「加入意思の確認」を両方行なっているPTA101校(グラフ2行目)では、加入率が「90%を超える」PTAが88.8%、一方「任意加入の説明」「加入意思の確認」のどちらも行なっていないPTA18校(グラフ5行目)では、全てのPTAで加入率が「95%超」となりました。

「説明なし」「確認なし」より、「説明あり」「確認あり」の方が、加入率が低くなるのは至極当然のことと言えます。

調査の結果から、「任意加入の説明」「加入意思の確認」を両方行なっていても、多くの保護者が加入しているPTAが多いことがわかります。一方で「任意加入の周知を徹底したら、会員が激減した」というケースもあります。一定の加入率を維持していくためには、一般の団体と同様、「参加しやすい活動」「魅力的な組織」を模索し、変えるべきことは変え、それらを保護者に説明し、理解や賛同を得ていくことが必要だと考えます。

「加入意思確認をしたら、非加入の人が出てしまうのではないか」という不安の声もよく耳にしますが、今や加入率が100%ではないPTAは珍しいことではありません。加入したくないという人が出てくることを恐れることはありません。
もし仮に、加入率が下がっても、それは、PTAのあり方を考え直すチャンスと前向きにとらえ、PTA活動の目的は何のか、本当に必要な活動は何のかを、役員で考える時間を持ったり、保護者に意見を聞いたりしてみてはいかがでしょう。Google formなど便利なアンケートツールも色々ありますので、うまく活用してみましょう。

非加入世帯への対応
調査に回答した東京都のPTA159校のうちPTAに「非加入の世帯がある」とした111校に、「非加入世帯への対応」について聞いてみました。
結果は「区別なく対応が」61.3%、「実費負担にて対応」19.8%、「対象外の場合あり」18.9%となりました。(当協議会の2022年9月実施の都内公立小学校PTA159校を対象とした「PTA実態調査」から)

このように、PTAのイベントや卒業記念品などの取り扱いについて、PTAに加入しているかどうで区別がある学校も少なくありません。仮に、PTAが非加入世帯の子供たちに記念品を渡さなかったからといって、違法とは言えないと思われますが、PTA活動が「会員の子供のため」に行うものではなく、「その学校に在籍している子供のため」に行うのが原則と考えるのであれば、入会による区別は適切であるかを考えてみる必要もあるでしょう。
地域や学校によって状況は異なりますが、対応の仕方によっては、差別やいじめのきっかけとなったり、非加入世帯からのクレームにつながったりする可能性もあります。もちろん、加入状況に応じた対応は、あくまで各PTAの判断に委ねられています。PTAが誰のための、何のための組織なのかを考えることが重要です。
[卒業記念品]の事例
・不公平感を持つ保護者が多いなら、会費を使って記念品を贈呈することはやめる。
・会費でなく実費を集め、卒業記念品を共同購入するような形にする。

入会したくなるPTAとは?
「役員、委員ができないから会員にならない」、「役員、委員をやりたくないから会員にならない」は加入しない理由としてよく聞かれます。一般社会の常識からすると「あれ」と思うようなことでも、PTAや学校では「当たり前」のこととして、何十年も引き継がれてきたこともあります。
前例に捉われず、改革・改善を進めていくことが重要です。いじめ・ネット・ゲーム・犯罪など子供たちをとりまく危険の多様化、気候変動による災害の増加、担い手である保護者自身の働き方の変化など、PTAを取り巻く状況もどんどん変わっています。なのに、PTAだけが変わらずにいられるわけがありません。

具体的には、
●保護者が「入会してもいいな」と思えるような活動
組織や地域にとってだけでなく、自分の子供や保護者自身にメリットを感じられる活動をする

●個々の事情にも配慮しながらも明瞭性、公平性のある運営
「あの人一度もやっていないからずるい」というような声があがらないような配慮を心がける

●地域や保護者の実情に応じた組織づくりや活動内容についての改革・改善を継続
役員や委員活動の負担を軽くして、協力しやすい環境を作ったり、任意加入団体として魅力と感動が伝えられるような活動内容に注力する

長くPTAに関わっている人だけではなく、新たに関わる人の新鮮な意見もしっかりと聞いていくことも、PTAの改革にあたっては大切なことだと思います。

=FAQ=

Q.PTAは全員加入ですか?
A.PTAは「社会教育関係団体」の一つに位置付けられおり、保護者への入会を強制することは適切ではありません。入学や転校してきた家庭へは、まず、多くの保護者の協力により児童や学校の環境を支えているというPTA活動の目的や意義、活動への関わり方などを十分に説明し、理解をしてもらうことが大切です。そのうえで、入会は任意であることを伝え、何らかの方法で入会の意思を確認しましょう。

Q.入会意思の確認方法は?
A.書面やwebフォームなどを利用して何らかの「入会届」を提出してもらいましょう。保護者の同意無しに 学校からPTAに個人情報を提供することは個人情報保護法で禁じられているため、PTAで名簿を作成する必要がある場合は、PTAが独自に個人情報を収集する必要があるためです。活動内容や会費、 個人情報の取り扱いなどを記載した入会説明文書を配布するなどした上で、会費の納入をもって「入会届」とするPTAもあります。

Q.任意加入であることをいつ説明したらいいですか?
A.新入学予定の保護者説明会で説明することが推奨されます。説明にあたっては、PTA活動への理解を深めてもらう意味でも、入会案内を作成し配布することが活動の明瞭化、トラブル防止の観点からも理想的であると言えるでしょう。

Q.PTAに入会すると費用がかかりますか。
A.(学校より異なりますが)定められた会費を支払います。その中から、PTAでは、PTA向けの保険に加入したり、事業の実施や運営を行います。

Q.入会をしたくない保護者への対応は?
A.まずは、学校側と協力してPTA活動の意義について説明するなどの個別対応も一つの方法です。前項目で挙げたPTA活動の保護者メリットなどもお伝えしてみましょう。

Q.入会しない理由は?
A.家庭の事情や病気、信条など様々な理由があると思います。個人情報保護の観点からも必要がなければ入会しない理由は聞かないほうがよいでしょう。聞くなら、「今後のPTA活動を見直すためにも差し支えなければ」と前置きし、無理に聞き出すことは控えましょう。役員、委員決めなどでも同様な配慮が重要です。保護者同士のつながりをつくるどころか、関係を悪化させてしまう可能性も否めません。

Q.非加入なのでPTAからの連絡を受け取りたくないのですが?
A.非加入のご家庭にも手紙や広報紙を配布しているPTAはたくさんあります。PTAからの手紙の中には 全保護者に伝えたい内容もあります。また、教室で配布する際に、非加入の子供には配布しなかった場合のお子さん自身の気持ちにも配慮したいところです。さらには配布先を分類することで、保護者や教職員の事務負担を増やさないということもあります。

Q.入会したいけど会費を払う余裕がないのですが?
A.個別の事情がある場合は、校長先生、PTA会長まで相談してみてください。それにより知り得た情報を第三者に漏らすことは一切ありません。

Q.非加入の保護者との関わりかたは?
A.PTAの機能を下記二つの側面から考え、親睦団体としての機能面では会員保護者を中心に、環境整備面では会員、非会員を問わず全保護者を対象とするという考え方もあります。
・学校と保護者がコミュニティとして機能し、学び合い、高め合っていく親睦団体
・保護者として子どもたちの教育環境の整備に協力する団体
例えば、安全パトロールや運動会のお手伝いなどは、全保護者に呼びかけを行い、強制でなく自らの子供達のためにといった自発的な参加を促す機会をつくるというものです。

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都Pは、各単位PTAや市区町村PTA連合会の自主的な活動を尊重し、強制・制約することはありません。ここに記載された文章や考え方も「参考」としてご活用ください。
また、以下のひな形などは、法的な効力を保証するものではありません。これを利用したことによるトラブルについては、都Pで責任を負いかねますので、各PTAの責任のもとご活用ください。

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入会、退会に関する届出のサンプル
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○○小学校PTA 入会のご案内

 

以下の入会に関わる事項を確認した上で、○○小学校PTAに入会いたします。

 

・○○小学校PTAへの入会は任意です。

・入会届は、1家庭につき1枚(または児童1名につき1枚)をご提出ください。

※児童が複数在籍する場合、一番上のお子さんの学級でご提出ください。

・PTA会員名簿を作成し、名簿に掲載される会員に対して配布するため、連絡先等をご記入ください。

・作成された名簿はPTA内のみで使用し、PTA活動以外の用途では使用しません。尚、本会の個人情報取り扱いについては「○○学校PTA個人情報取扱規則」をご確認ください。

・ご自身のお子さんの卒業や転校などで○○小学校に在籍がなければ自動的に退会となります。

・会員期間の中途で脱会した場合の会費については○○○とします。

・複数名で活動していただいても結構です。連絡窓口となる方のお名前を記入ください。

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○○小学校PTA 入会届

○○小学校PTA 会長 行

本会の趣旨に賛同し、入会します

 

日 付:20○○年○○月○○日

記入欄:保護者氏名、住所、連絡先電話、メールアドレス、在校生の学年・組、児童名などのうち必要な情報のみに限定して取得することが重要です。

 

[解説]毎年意思確認を行う場合などには、「会員期間は、○○~○○までとします。毎年書面にて入会継続についてのご意思の確認をさせていただきます。」

初回に個人情報取扱いに関する説明を記載などして「個人情報取扱同意書兼誓約書」と兼用する方法もあります。口座振替や学校に会費徴収委託するなどの場合は、その書類も同時に得た方が合理的です。

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○○小学校PTA 会長 行

○○小学校PTA 退会届

 

以下の退会に関わる事項を確認した上で、○○小学校PTAを退会いたします。

・「PTA○○総合保障制度」につきましてはご利用対象外となります。

・PTA主催行事のうち○○や○○への参加は不可になります。

・全児童に関わるPTA活動において、非会員のお子さまが区別や差別されることはありません。

・PTAからのお知らせなどの配布物は全家庭数もしくは全児童数で配付されることがあります。

・お申し出があれば年度毎にPTAに加入できます。

・PTA会費の返金がある場合は、○○○○であることを了解しました。

 

日 付:20○○年○○月○○日

記入欄:保護者の署名、児童の情報(年、組、氏名など)

 

※ご記入頂いた情報はPTA活動以外には使用致しません。あわせて「○○小学校PTA個人情報取扱規程」もご確認下さい。

 

[解説]退会届の提出を拒否された場合でも、退会に伴う説明など書面で行うなど丁寧な対応を行い、納得して頂くことが重要です。非会員に対する区別や差別を行うことは各PTAの判断となります。もし、退会に伴う不利益がある場合、具体的な事例を明記し周知することが 保護者との信頼関係構築、トラブル回避のためにも重要です。