なぜ一人一台の情報端末を学校に導入するのか?国が進めるGIGAスクール構想で始まる新しい学び

GIGAスクール構想とは、文部科学省と経済産業省が進めるICTを利用した学校教育の構想です。コロナ休校で、一人一台端末の支給も大幅に早まりました。

来たるSociety5.0

この背景には急速に発展するデジタル化を教育に取り入れなければ、日本の国際競争力が大幅に低下してしまうと言う危惧が現実を帯びてきたということがあります。政府は「Society.5.0」時代という用語で表現しています。GIGAスクール構想を語る際に必ずSociety5.0がセットで紹介されています。


GIGAスクール構想の説明会でよく上映される動画

 

文科省作成のSociety5.0の動画

Society 5.0は、ドイツが提唱したIndustry 4.0から影響を受け、情報社会に続く新たな社会として、サイバー空間と現実空間を融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会を表しています。

日本は、理系の能力は大変高く、国際的な調査でも上位に位置しています。しかし、最も上位の学生は医学系に進学してしまい、高度な理数系人材が産業界への就職が少ないことも日本のIT系産業の発展のネックになっています。

GIGAスクール構想にあたり、特に小学校の児童に対して、次の3つが大きく変わりました。

  1. 一人一台の情報端末(タブレットやパソコン)支給
  2. 個別最適化された学び
  3. 情報活用能力の育成やプログラミング教育の推進

前回(2020年度)の学習指導要領改訂で、来たるべき未来の社会に対応した教育に対応することになりました。GIGAスクール構想はコロナ渦で突然生まれた訳ではなく、文科省と経産省の連携によって始められていた政策です。
世界中で来たるべき未来の予測が行われているように、従来の教育体制を早急に変えていくことが、日本の競争力を維持していく上でも大変重要です。

「今後10〜20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」
マイケル・A・オズボーン准教授(英・オックスフォード大学)

「子供たちの多くは将来、今は存在していない職業に就く」
キャシーデビットソン教授(ニューヨーク市立大学大学院センター)

一人一台の情報端末(タブレットやパソコン)支給

GIGAスクール構想の目玉政策に見えますが、タブレットやノートパソコンを学校教育で活用する案は従前から開始されていました。多くの学校で子供が使えるパソコンは用意されていて、限られた時間ではありますが、情報端末を活用した教育が実践されています。

より本格的に学校教育に取り入れる上で、どの子供も情報端末を持っている必要があります。BYOD(Bring Your Own Device=あなたの機器を持ってきて)といい、機器は自身で用意し授業等で利用するという方法も検討されていました。これはアメリカ・フィンランドなどで採用されていて、教育現場にも早々に導入されました。タイプライター文化も有る欧米では、パソコンの普及も早く、親の使い終わった機器の利用や中等教育(中高)や高等教育(大学)で必ず必要になるので、日本よりもスムーズに導入出来たと思われます。

日本では、一人一人違った機器やOSが使われると、教職員の現場での指導が煩雑になることや保護者の負担など様々な根強い反対意見がありました。そのため、自治体での一斉導入が求められていました。当初の予定では2030年度までに一人一台を達成する予定でしたが、コロナ休校で予定を前倒しして全児童への提供が決まりました。

個別最適化された学び

子供それぞれ学びの進度が違います。全員が一斉に同じドリルを行うことには、できる子にもできない子にも負担になります。そのために、一人一人の能力に合わせた問題が出るような仕組みが出来るのが個別最適化です。

情報活用能力の育成やプログラミング教育の推進

2020年の教育指導要領の改訂で、プログラミング教育が必須となりました。授業でも情報端末を活用した授業も本格的に始まりました。

各省庁の取り組み

このように文部科学省や経済産業省は、未来の日本のために、子供たちの教育にICTを活用することを強力に進めています。両省庁のウェブサイトでも様々な情報発信が行われています。

文部科学省

StuDX Style(GIGAスクール構想を浸透させ学びを豊かに変革していくカタチ)
https://www.mext.go.jp/studxstyle/

生きる力(新学習指導要領の紹介サイト)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

経済産業省

未来の教室(EdTech)
https://www.learning-innovation.go.jp

STEAM Library
https://www.steam-library.go.jp

世界でも最も遅れている日本のICT教育

OECDではPISAと呼ばれる国際的な学習到達度調査が3年に1回行われています。15歳(高校1年生)を対象にした調査です。2018年の調査によれば、中学校でのICT活用の割合は最低ランクでした。

PISA調査による国際比較

学習にインターネットやデジタル機器を利用している割合が圧倒的に低い結果となっています。

1 週間のうち、教室の授業でデジタル機器を 使う時間の国際比較(2018 年)数学の授業
1 週間のうち、数学の授業でデジタル機器を 使う時間の国際比較(2018 年)
学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る
学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る

上記はOECD PISA2018データーベースをもとに国立教育政策研究所が作成したグラフです。

 

日本の教育予算はOECD加盟国でも最低ランクで、新たな予算確保が厳しく、教育現場にも対応出来る人材がいないこと、また教職員からの根強い反対がありました。

BYODであったアメリカもオバマ政権の時にICT環境が整備されました。現在は多くの州でノートパソコンやタブレットを配布されています。必要に応じて自身のスマートフォンやタブレットの利用が許可されたり、教員のICTスキル向上の取り組みも行われています。

 

保護者の不安は?

タブレットやパソコンを使った教育が重要であることは承知の通りですが、では小学校で行う必要はあるのでしょうか?このような機器を使うことによる健康面への影響はないのでしょうか?

小学校での利用は?

中学校以降であれば、ほとんどの国でICT教育が積極的に行われています。小学校の場合、多くの国で小3相当から本格的に始まるようです。フィンランドなどは、小1でもスマートフォン持参可能で、適宜授業中に調べたりすることができます。但し、利用方法に違反があると没収されます。ハンガリーでも小1からプログラミング教育が行われています。オーストラリアでは幼稚園からデジタル・テクノロジーを活用した教育が始まり、小学校からプログラミングやロボット実験などがカリキュラムに取り入れられています。

ヨーロッパやアメリカでは、ICTツールの具体的な使い方を教えるという方法はとらずに、自分自身で解決するという方法が主体です。新しいものがドンドン出くれば陳腐化してしまうので、自分で苦労して出来るようになる事が重要という考え方です。

身体への影響は?

都小Pの保護者アンケートでも、視力の低下や姿勢が悪くなることなど、身体への影響を不安と考えていることが分かりました。では、学校ではこのような問題の対策はとられているのでしょうか?

政府でも正しい姿勢で操作することや機器の扱い方などの指導方法が提示されています。また、発達段階や児童の実態に応じて検討するように指示されています。

早くから正しい姿勢で操作することは大変重要です。確かにデジタル機器特有の操作環境はありますが、紙の本や鉛筆でもイスに座ったり近くを見ることは変わらないでしょう。むしろ自宅でのゲーム機器やテレビ視聴も見直してみることもオススメいたします。

一人一台の実感は?

2021年と2022年に行った都小Pの保護者アンケートの比較では、子供のプレゼンテーション能力の向上への期待が顕著に上昇していました。

小学校でのタブレットなどの利用では、本格的なプログラミング教育よりも、機器を使った発表などが積極的に行われています。

そのため、直接的なICTスキルの向上よりもプレゼンテーション能力の向上に期待が集まったのではないかと思われます。

GIGAスクール構想は正しく進んでいるのだろうか?

GIGAスクール構想は一人一台配布により大きく注目されましたが、本来は長期的な目標です。教員への研修も活発に行われており、文科省も経産省も様々な情報発信や授業アイディアのサイトを公開しています。ICTサポートに対しても予算を組んでいます。各自治体の教育委員会も独自の取り組みが行われています。

残念なことは、このような広範な取り組みが行われているにもかかわらず、保護者への情報提供は行われていないことや保護者からのニーズも取り入れられていないことです。IT関連企業に関わる保護者は10%程度いるので、このような保護者からの知見も取り入れるべきだと考えます。

 

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